65歳以上のご家族を お持ちの方へ
このような肺炎のリスクにご注意ください
肺炎は命に関わる病気ですが、年齢や、生活習慣、お持ちの病気によって肺炎のリスクが高くなることが知られています。
大切なご家族が肺炎にならないよう、ぜひ、気にかけてください。
あなたのご家族は、
65歳以上ですか?
肺炎で亡くなる日本人の約98%は65歳以上です。
65歳はまだまだ元気な方が多いですが、健康への過信は禁物です。
元気だと思っていても、

日常生活が制限されることなく過ごせる期間を健康寿命といいますが、男性の健康寿命は約72歳、女性は約75歳です。65歳の男性の場合、健康寿命まであと7年です。ご家族の方ができるだけ元気に過ごし、健康寿命を延ばせるよう、今から生活習慣に気をつけるだけではなく、肺炎予防も心がけましょう。

厚生労働省. 第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料(平成30年3月9日)より作成
70歳以上ですか?
年をとるとともに身体の機能は衰え、病気に対する抵抗力も低下します。
肺炎による死亡率(人口10万人における肺炎で亡くなる人の数)も年をとる程、大きく上昇することが分かっています。年齢は肺炎の重大なリスクの一つなのです。
肺炎で死亡する割合は・・・


厚生労働省. 人口動態統計(確定数)2017年より作成
高齢者の肺炎は発熱、咳といった典型的な症状ではなく、元気がない、食欲がないといった様子しかあらわれないことがあります。そのため肺炎と気づかないうちに重症化する危険性がありますので、ご家族が早めに気づき、お医者さんに相談することが大切です。
喫煙歴はありますか?
喫煙は様々な病気に関係していることが知られていますが、肺炎の発症リスクも上昇させることが分かっています。
喫煙歴がある人では、喫煙歴がない人に比べ、2.0倍*も肺炎の発症リスクが高くなります。禁煙後すぐに効果があらわれるわけではありませんが、5年間禁煙を続けると、そのリスクの上昇度が約50%*低下するという報告がありますので、今からでも禁煙することが大切です。喫煙は重大な肺炎のリスクになるため、喫煙歴のある人は特に肺炎予防が大切です。
* オッズ比
Almirall J, et al. Chest 1999; 116(2): 375-379.
喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など呼吸器に持病はありますか?
呼吸器の持病も肺炎のリスクです。例えば、肺炎球菌による肺炎*1のリスクは、喘息のある人では2.0倍*2、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のある人では4.7倍*2に上昇するという報告があります。また、高齢になるほど発生率が高まっており、特に、高齢で、呼吸器に持病のある方は肺炎に十分な注意が必要です。
*1 侵襲性肺炎球菌感染症
*2 オッズ比
Inghammar M, et al. Clin Microbiol Infect. 2013; 19(12):1148-1154.
心不全や狭心症など心臓に持病はありますか?
心不全や狭心症など心臓の病気も肺炎のリスクです。
心臓に持病のある人では肺炎球菌による肺炎*のリスクを6.4倍に上昇させるという報告があります。また、高齢になるほど発生率が高まっており、特に、高齢で、心臓に持病のある方は肺炎に十分な注意が必要です。
*侵襲性肺炎球菌感染症
Kyaw MH, et al. J Infect Dis. 2005; 192(3): 377-386.
糖尿病ですか?
糖尿病も肺炎のリスクです。糖尿病のある人では肺炎球菌による肺炎*のリスクが3.4倍に上昇するという報告があります。また、高齢になるほど発生率が高まっており、特に、高齢で、糖尿病の方は肺炎に十分な注意が必要です。
*侵襲性肺炎球菌感染症
Kyaw MH, et al. J Infect Dis. 2005; 192(3): 377-386.
お一人でお住まいですか?
65歳以上で一人暮らしをしている世帯は約27%という報告があります。
そして、65歳以上で何かの体調不良を自覚している人は40%以上になります。
高齢になると免疫力が落ち、肺炎になると急激に症状が進むことがありますので、一人でお住いの方には、特に周りの方が体調を気にかける必要があります。
厚生労働省.平成28年 国民生活基礎調査の概況
大切な人を肺炎から守るために、ご家族が今できること
ご高齢のご家族が肺炎にならないように、その予防方法を知って下さい。
大切なのは、原因となる細菌やウイルスが、からだに入り込まないようにすること。そのために、予防の一環として、心がけてほしいことがあります。
高齢者が肺炎を防ぐ方法として、からだの免疫力を高めること、日々の感染予防の実践、「成人用肺炎球菌ワクチン」や「インフルエンザワクチン」の予防接種があります。

成人用肺炎球菌ワクチンや、
インフルエンザワクチンを接種する
監修ドクターからの メッセージ
肺炎は、ご本人にとってつらいものですが、ご家族の方にとっても、心配事であるとともに、入院時のサポートや介護などのご負担もかかります。
65歳を過ぎ、高齢になればなるほど肺炎にかかったり、亡くなったりするリスクが高くなります。今は元気そうに見えても、年齢とともに、若い頃より抵抗力(免疫力)は確実に低下しているのです。
特に高齢者の肺炎は典型的な症状が出ないことがあり、ご家族や周りの方がわずかな体調の変化を見逃さないことが大切です。
ぜひ、日頃から肺炎予防について、皆さまで話し合ってください。
うがい・手洗い・マスクの着用、口腔ケア、予防接種といった肺炎予防をはじめること、そして予防はつづけてこそ意味があること。入院や通院をすることなく元気で暮らせるよう、ご家族やご親族の方が気にかけていただきますことをお願いいたします。
合言葉は、はじめよう、つづけよう肺炎予防です。
地方独立行政法人 長崎市立病院機構 副理事長 / 長崎みなとメディカルセンター 院長
門田淳一